2002年3月4日 日刊工業新聞 
 

伊藤製作所の本社工場。夜間、無人の工場ではマシニングセンター(MC)、ワイヤカット放電加工機(WC)が黙々と金型を作り続ける。この光景はすでに20年前から当たり前となっている。
同社は業界でもいち早く、120本ツール搭載のMC、自動運転のWCを導入した。「MCは120本のツールを搭載できるため、加工毎に工具を交換する必要が無く、無人運転が出来るようになった」と伊藤澄夫社長。

1990年からCAD/CAMを導入し、自動設計できるシステムを整えた。自動設計システムは、金型のレイアウト図面を入力すると、立体部品図などが数値制御(NC)データで出てくるというもの。この自動設計システムを利用することで、図面データの製作にかかる時間が以前の半分に短縮できた。

また自動設計システムの図面データは、人手でNCデータに変換する必要が無く、加工プログラムの入力ミスが無い。このため図面データはそのままMCに利用できる。

設計から金型加工まで自動化することで、金型の設計製作にかかる時間が、「普通、1ヶ月かかるものが、当社では2週間、早いものでは1週間で出来る」(伊藤社長)といい、全国でもトップクラスの早さを誇っている。
取引先では開発期間が年々短くなっており、同社の短納期システムがここに来て、注目を集めている。

「切粉がうまく吹き飛ばない。エアの位置を変えてはどうか?」、「金型がバラシ難いのだが...」 週に3回、金型部門、営業部門、プレス部門のそれぞれの担当者が意見交換を行う。同社は金型の設計製作のほか、自社製の金型を使ってプレス部品の加工を行っており、金型ユーザーの視点で品質改良することが出来るのが強み。このため加工がしやすく、分解しやすく、メンテナンスが容易で無駄がない金型をつくる事が出来る。

自動設計システム、MCなどによる納期短縮と低コストの実現、ユーザーの視点で設計する品質の高さにより、「数年前は、受注残が1ヶ月半程度だったが、最近は3ヶ月に伸びている」(同)という。不況期にありながら、「注文が切れずにある」(同)といい、金型業界では抜きんでた存在となっている。  

(日刊工業新聞社 三重  三橋洋子記者)