1995年4月27日 日刊工業新聞 
 

三重県 産業界に新しい風

中堅企業 得意技術生かして海外進出

―三重県産業界は自動車などの不信から全体的に沈滞を余儀なくされている。しかし中堅企業の中には独自のカラーを生かして積極的な事業展開を図るところも多い。その一方、シャープが南勢の多気町に世界最大級の液晶工場建設を進めており、県内の産業構造に新しい風を吹き込もうという動きもある。さらに県下最大の経済団体である県商工会議所連合会の会長が交代するなど、フレッシュな動きが相次いでいる。―

三重県のこのところの生産活動は全体的に低調で、94年も前年を下回った。全国の生産指数と比べても同年3月までは同水準だったが、夏場の渇水や自動車業界の低迷で低い水準となった。95年代1四半期も引き続き同様の傾向で推移している。こうした中、中堅企業の中には独自の戦略で新たな事業展開を目指し始めた。

金型メーカーの伊藤製作所(四日市市)は海外事業を展開するため「輸出事業部」を新設した。海外に生産拠点を移している日系メーカーに精密金型の輸出を始めるのが狙いだ。とくに東南アジアの企業では、現地に進出して日系企業に部品を供給するにも精密金型を作る技術が無いため、現在は国内で精密金型を生産して輸出する。

伊藤澄夫社長は「大手企業が急激な円高に対応する結果として国内産業の空洞化に拍車をかけている。中小企業もこうした動きに独自の対応を迫られている」とし、得意な技術を生かそうというものだ。

同社の金型設計子会社、イートン(四日市市)も金型自動設計システムの海外販売を始めた。これまで同社が蓄積した金型の設計データを利用し、通常は数時間かかる加工データの出力を瞬時にアウトプットできるもの。既に、フィリピンの大手日系企業の現地技術者が来日、研修している。