2006年2月1日 プレス技術 
 
 順送り金型をコアに、国際競争力を高めるための
低価格・短納期の付加価値生産性の開発強化を目指す

        
(株)伊藤製作所は、昭和20年に先代の故・伊藤正一氏が三重県四日市市浜町で「伊藤製作所」を創業し、 技術者として、戦災による地場産業の漁網機械部品を生産し復興事業に寄与した。昭和32年、株式会社に改組する。
 かねてより金型とプレスの順送加工の組合せによる高効率性に注視し、昭和38年に順送りプレス型の設計・製作を開始した。

昭和39年、機械設備増強のため、昭和43年、トライプレスを導入したときに、顧客の要望により順送りプレス加工を手がけることとなり、現在の営業種目の順送り金型、プレス部品加工、部品組立の発端となった。

 毎年、プレス部品受注の増加に伴い、順送り金型にマッチングするAIDAのプレス機械を主力に順次導入し、現在は自動プレス機が60台となり、 大きな能力を持つ今や当社の主力部門となった。
 昭和61年、伊藤澄夫氏が代表取締役社長に就任。
 昭和62年、広永町上高田に、プレス専用工場を新設。(2100u)
 平成7年、フィリピンに合弁会社イトーフォーカスを設立。払込資本金800万ペソ。
 平成12年、名古屋投資育成会社から2,000万円の増資により資本金5,000万円となる。同年、品質保証の国際規格lS09002の認証を取得。次いで14年、環境マネジメントシステム・エコステージTの認証を取得した。
 平成15年、合弁会社を解消し、フィリピン・ラグナ州に100%子会社lSPC社を設立。払込資本金2000万ペソ。

順送り金型の専門メーカーとして

 当社は創業以来、順送り金型の製作・販売をコアとしている。この順送り金型は、昭和58年にサムシステムを導入し、レイアウト図面完了後8時間以内に金型プレート加工のマシンニングセンタ稼働を実現している。又、「使いやすい、品質が安定している、長持ちする、修理が簡単」など高く評価され、この金型を武器に多くの顧客から毎月プレス部品の安定した受注を持続している。
 当社は、国際競争力強化の一環として、順送の大型化がある。20〜30工程もの金型に対応してプレス機の大型化を図るため、PMX−6000を近く導入する。
 一方、冷間鍛造を採用し、数10分かかる切削が1秒で可能な「冷鍛順送」を開発した。5年間テストして集積したデータを基にAIDAのUL導入を視野に、海外との価格競争にチャレンジしていく。

順送り金型とAIDAプレスの融合

 当社の最先端技術の順送り金型が、その機能を果たすために一体融合するプレス機械として、AIDAのプレス機械群(PMX、PDA、UMX、NCS、NC1・2)を採用し、加工の精密化と高速化および万全のメンテナンスにより、他のライバル企業との差別化を実現している。
 例えば、AIDAのPMXのリンクモーションは、加工域での速度を低減することで金型への衝撃を緩和し、加工時間を長くしている。これにより金型寿命が長く、品質が長時間安定し、生産性を向上させている。当社では、冷間順送にも活用し効果
を上げている。当社プレス部門では、男女合計8名の技術者が60台の自動プレス機を駆使し、日産110万個(月商1億2000万円)と言う篤くべき合理化が進んでいる。

 一方、金型部門では、
21台のCNC工作機の夜間無人運転による金型製作が日常化しており、時間当たりの生産性は業界のトップクラスといえよう。

グローバル展開をどのように

 当社は、近隣の得意先様の存在はもちろん、生産のための立地に非常に恵まれていることを痛感している。つまり、当社は近隣に多種多様の最新鋭の機械設備メーカーや工具、材料メーカーを擁し、常時即刻調達できるという立地にあり、生産効率を上げていることである。私は、この立地環境を「世界最高の産業インフラ」と呼称している。これは東京地域、大阪地域にも言える。
したがって、日本は非常に有利な生産環境に置かれていることが国際競争力の一つの要因と言えよう。

 私は、拙著『モノづくりこそニッポンの砦』(工業調査会刊)で中小企業の体験的アジア戦略を提言している。私は、年中アジア諸国を調査して回り、現状把握に努めている。当社のフィリピン進出はその成果とみる。
 今後は、インターネットを駆使してグローバル展開をしながら、グループで経営基盤を強化し、順送り金型を受注し、低価格・短納期で生産できる体制を構築し、国際競争力を高めていくことを目指していく。